MSAP工法のポイント

MSAP工法が注目を浴びてきていますね。

MSAP工法は主にスマートフォンのプロセッサに使われるような小型パッケージ基板(CSP=Chip Size Package)に用いられています。

MSAPの利点はあらかじめ樹脂(絶縁層)と銅箔(導体シード層)との密着が約束されているため、SAPのような樹脂と無電解銅めっきの密着を気にしなくていいところにあります。

その代わりSAPと違って、下記の工程がポイントとなります。
1,レーザービア加工が銅箔貫通処理(Cuダイレクトレーザー加工)となる(下記工程2)
2,シード層エッチングエッチング量が多くなる(下記工程9)

1はブラウン処理が必要になります。
最近ではマイクロシンと呼ばれる極薄銅箔が普及しており、その極薄銅箔に対しての粗化エッチングとなりますので、エッチング量の制御がカギとなるでしょうか。

2はSAPであれば無電解銅めっきによる0.5um程度のシード層エッチングでしたが、MSAPとなると前述のマイクロシン銅箔(2〜3um)のエッチングが必要になります。

SAPでは無電解銅めっきと電気銅めっきとの結晶粒界の差を利用した選択性エッチングなども用いられていますが、MSAPでは銅箔と電気銅めっきとのエッチングレートの差がつきにくいため、どうしても回路となる電気銅めっきのエッチング量が増えてしまいます。
エッチング量が増えるとサイドエッチングやアンダーカットといった問題も心配されますね。

MSAPは絶縁層と導体との密着が約束されているのは大きいと思います。
ひょっとしたらSAP工法でも手が届かない更なるファイン回路の形成には、このMSAP工法が有力になるかもしれませんね。

【書籍】本当に実務に役立つプリント配線板のめっき技術

本当に実務に役立つプリント配線板のめっき技術

本当に実務に役立つプリント配線板のめっき技術

  
今回はプリント基板向けめっき技術本の紹介です。

この分野の本はいろいろと出版されているのですが、基本原理は記載されいているけれど工法が古かったりしてあまり役立たないこともあります。

その点これは今年出版されたもので最新の工法にも触れられています。

まためっきの基本原理、各種めっきの概要、めっき装置、また浴管理や解析、評価技術についても広く書かれています。

プリント基板の製造工程におけるめっき技術の勉強をされたい方にはおすすめです。

硫酸銅めっきの塩素はなぜ必要か?

biztechの日記へのアクセス検索ワードを眺めていると、「硫酸銅 塩素 役割」「硫酸銅 塩素 なぜ」などのワードがしばしば見られます。

今回は硫酸銅めっき中の塩素イオンの役割についてです。
以前のエントリでは「抑制剤の作用を補助する役割」とざっくり説明していますが、少々詳しくお話します。

まず硫酸銅めっきの添加剤は一般的に下記の3種類で構成されています。
 ポリマー (界面活性剤)
 レベラー (窒素系化合物)
 ブライトナー(硫黄系化合物)

塩素イオンは基板の銅表面に吸着します。その塩素とめっき液中のポリマーが静電気的な作用で銅表面に膜を作ります。
その膜がめっきの電気的析出の抵抗としてはたらき、析出を抑制する作用があるのです。

ですので塩素イオンの存在していないめっき液でポリマーだけを添加しても、析出抑制効果はほとんどみられません。

塩素はポリマーの吸着サイトのようなはたらきをしているということです。

この効果を利用して塩素イオン濃度を上げてめっきの析出を抑制したり、また塩素濃度を極端に下げてポリマーの効果を抑えたりする工夫もなされています。

ただし塩素イオンが過剰になると含りん銅アノードの表面にCuClを形成してしまい、アノードが不動態化してしまうというトラブルもありますので注意が必要です。



 

P板.comさんにご紹介いただきました!!

このたび”プリント基板のネット通販 国内シェアNo.1!”のP板.comさんに、本ブログのフィルドビアめっきの記事をご紹介いただきました。

P板.com ビルドアップ基板製造サービス

ありがとうございます!!

レーザービアの穴あけ技術(ショット数やエネルギー)やプラズマによるドライデスミアも注目度が上がっている技術ですね。

またそのあたりの話題もさせてもらおうと思います。

表面処理と廃液処理

表面技術Vol.62(2011)No.11がアップされていますね。

今回の特集は「廃液処理の基本と新しい流れ」です。

環境問題、資源回収の観点からも廃液処理の重要性は年々高まってきています。

このような背景からもあらかじめ廃液処理することを考えたプロセス(表面処理薬品)が求められていくことでしょう。

そういう意味では表面処理薬品メーカーと廃液処理業者の連携も必要になるかもしれませんね。

 エコプレーティング(eco plating)
 エコエッチング(eco etching)
 エコトリートメント(eco treatment)

なんていうキーワードが近い将来流行るかもしれませんね。

JPCA Show で見逃した・・・

主催者側から来場者数が発表されていましたね。

☆来場者数(カッコ内は昨年度数)
 6月13日(水) 31,996(28,091)
 6月14日(木) 37,601(33,378)
 6月15日(金) 45,364(41,924)
 3日間累計  114,961(103,393)

☆出展者数/小間数(カッコ内は昨年度数)
 477社(455社)/1,522小間(1,508小間)

昨年よりも10%ほど増えているようですね。
ほんとはもっと盛り上がってほしいのですが・・・

Siblogさんの感想を拝見すると、
なんと「電子機器分解展示」なる特別展示が行われていたようで・・・、
完全に見逃しましたね。

アプリケーションプロセッサの実装前チップとか、めっちゃ見たかったなぁ。

画像をCDとかで販売してくれないですかね・・・

まずは日経エレクトロニクスの『分解大全』買おっと・・・。

JPCA Show 2012に行ってきました!

昨年は地震の影響もあってか、海外からのお客さんが少なかったようですが、今年はそこそこ賑わっていましたね。

今回に気なったのは「低粗化(粗化レス)・高密着」アイテムです。

銅をなるべく(まったく)粗化をしないで樹脂との密着強度を得るというコンセプトですが、その背景にあるのは「高周波対応とファイン化」です。特にICパッケージ基板(ICサブストレート)での適用が期待されています。

現状は密着強度を得るためには銅を粗化し、表面に凹凸をつけるという物理的手法が一般的です。(アンカー効果)

しかし高周波、ファイン回路ではそうすることが難しくなります。

導体に高周波電流が流れると、その電流は導体の表面を流れようとします。これを表皮効果といい、例えば1GHzの場合では導体の表面2umにほとんどの電流が流れるという計算になります。

そのため導体を粗化すると特に高周波環境下では抵抗となり、伝送損失が発生してしまいます。

そこで低粗化(粗化レス)の密着手法が必要とされているのです。

銅ベースで樹脂との密着が求められる工程としては以下が挙げられます。

 ・無電解銅めっき、銅箔とドライフィルムレジスト(DFR)の密着
 ・電気銅めっきとソルダーレジスト(SR)の密着
 ・電気銅めっきと積層樹脂の密着

DFRとの密着向上はファイン化に伴い、ラインアンドスペース(L/S)が10/10(um)を切るような回路が出てきており、高周波特性という意味では銅側のみならず、樹脂側も平滑な樹脂が用いられるようになってきています。
平滑な樹脂上に極細のDFRが形成されるのでどうしてもDFRの密着が甘くなり、その後の銅めっき中にDFRが剥がれてしまうという現象がおきます。

元々DFRのベースとなる無電解銅めっきの膜厚は0.5〜1.0umと薄いため過剰な粗化はできません。

今回のJPCA2012では0.05〜0.2um前後のエッチング量の極微細粗化を行い、DFRとの密着を確保する、または粗化しないで化学的に接着層を設けて銅と樹脂の密着を確保する2タイプが各社から紹介されていましたね。

極微細粗化タイプはエッチングすることで無電解銅めっき皮膜が断絶してしまわないか、化学密着タイプは接着層が回路部に残ってめっき析出を阻害しないかが評価のポイントになりますね。

SRや積層樹脂との密着は現在も粗化処理が用いられていますが、エッチング量は0.5〜1.0um程度が一般的です。これらもエッチング量が低減できるのは魅力的ですね。

今まではめっき厚をエッチングする前提で厚めに設定していたのが不要になります。ロスも減りますしファイン化に大きな原動力になりますね。

しかしめっき厚が薄くなるということは、薄くてもフィルド性を満足するめっき工法が求められるとも言えます。

各工程が連動していますので、トータルでの最適化が今後ますます重要になっていきますね。