硫酸銅めっきの不溶解性アノード

フィルドビアめっきをはじめとする硫酸銅めっきにおいては、不溶解性アノードの採用が進んでいますね。

不溶解性アノードのメリットとしては、
・アノードの補充や洗浄などのメンテナンスが不要
・アノードの寸法変化によるめっき厚ばらつきの問題がない
・アノードスラッジに起因する不具合(ブツ・ザラ)の発生がない
・アノードのブラックフィルムの管理が不要(ダミー電解など)
・アノードから溶出する一価銅による添加剤の変質がない
などが挙げられます。

硫酸銅めっきの不溶解性アノードは一般的にはチタン基材上に酸化イリジウムをコーティングしたものが広く使われています。

不溶解性アノードの陽極反応では酸素ガスが発生し、この酸素ガスによって添加剤が酸化分解されてしまうケースがあるため、アノードを隔膜などで隔離する対処も行われています。

最近では陽極の酸素ガス発生を抑えたアノードも開発され、一部では採用が進んでおり、この場合は隔膜が不要になるケースもあるようです。

また含りん銅ボールのようにアノードから金属塩の補給がされないため、金属塩の補給を考える必要があります。
一般的には酸化銅(CuO)が用いられています。

不溶解性アノードのデメリットとしては、
イリジウムアノードや酸化銅供給装置、隔膜などの装置コストがかかる
酸化銅を溶かすのに硫酸が必要なため、低硫酸浴では運用が難しい
・アノードの抵抗が高いため、整流器の定格が大きくなる
酸化銅起因の不純物の管理が必要になるケースもある
などが挙げられます。

酸化銅硫酸銅めっき中での反応は以下の通りです。

 CuO + H2SO4 → CuSO4 + H2O 

この通り酸化銅は硫酸と反応して溶解するためフィルドめっきのような極端に硫酸濃度が低いめっき浴では、酸化銅の溶解が進まないケースもあります。

また酸化銅自身もエッチング液などから再生成されるため、不純物が混入しているケースもあり、これらの不純物が硫酸銅めっきの性能を落とす事例も聞かれます。

しかし総合的にはアノードのメンテナンスが不要になったり、ブラックフィルムの管理、一価銅の溶出によるブライトナーの擬似過剰現象等の問題が解消されるのは大きなメリットだと思います。