フィルドビアめっきの不具合モード

今日はフィルドビアめっきについてのお話です。

フィルドビアとはまさに「via(BVH)」が「filled(充填された)」している状態のめっきです。

ですので当然のことながらビアが充填されていない状態は異常となります。

ビアが充填されてなく凹んでいる状態を「リセス(recess)」「アンフィル(unfilled)」「ディンプル(dimple)」などと呼びます。

リセスが大きくなるとフィルドビアの目的である上層との電気的導通が取れなってしまいます。

ではなぜリセスが発生してしまうのでしょうか。

代表的な原因としては、下記の事柄が挙げられます。
「フィルドビアめっきのメカニズム」が正しく働いていない状態)

1.攪拌が不足、または均一でないため銅イオンおよび添加剤が正しく基板に供給されていない

2.全体または局部のめっき膜厚が薄く、ビアが充填されるまでの膜厚に達していない

3.抑制剤が過剰でビアの内部のめっき成長まで抑制してしまっている

4.促進剤が過剰で表層(ビアの外側)のめっき成長まで促進されてしまい、
 ビアの外側と内部のめっき成長に差がなく一様に析出し、結果的に凹んでしまう

なかでも4は促進剤の変質によっても引き起こされ、問題となるケースがしばしばあります。

促進剤はブライトナーとも呼ばれ、一般的に有機硫黄化合物で構成されています。

アノードに含りん銅を使用している場合は、含りん銅の表面に一価銅が生成され、特に非通電時などはめっき浴中に溶出してしまいます。

この一価銅の影響でブライトナーが還元され変質してしまうと、促進力が過大となり抑制剤が効かなくなってしまいます。

その結果ビアの外側と内部の両方が促進されリセスにつながります。

これは「ブライトナーの擬似過剰現象」と呼ばれ、含りん銅を使用している際によく見られる不具合モードです。
(ブライトナー濃度は正常なのに、変質してしまったことにより性能が擬似的に過剰となっている)

対策としてはアノード周辺への酸素の供給を増やし一価銅の溶出を抑制したり、
めっきの休止後はダミー電解をして非通電時に溶出してしまった一価銅をリセットするなどの方法があります。

最近ではそもそも一価銅の溶出がないイリジウム電極などの不溶解性アノードの採用が進んでいます。